話01:“謎の男”、くちがたい。
秘密基地、2人の桃色がそれぞれ自分の時間を楽しんでいる最中、その疑問は投げられた。
「ねーねーさくらちゃんー」
「ん?なんスかマドカちゃん?」
マドカが推理小説のページを指差す。
「ここさー、“謎の男”ってあるじゃん?」
「あー、小説とかマンガだとありがちな表現っスよね。なんかマントで全身隠してたり帽子で顔見えなかったり。」
「この“謎”って何をもって謎って言ってるんだろね?」
「そりゃー…なんだろ、主人公かあるいは地の文の人がよく知らない人…って感じっスかね?」
微妙な顔で首を傾げつつ、さくらが答える。
なにかを考えるような間を挟み、マドカが口を開いた。
「じゃあさ…例えば、ふたつ上の知らない先輩も“謎の男”なのかな?」
「む、確かに…?」
「知らない先輩がさ、上の教室から運動場の私を見つめたりしてたら、そりゃもう完全に謎の男だよねー」
「間違いないっスね〜」
「てかさてかさ、その調子だと駅ですれ違っただけの人とか、おんなじ電車に乗った人も謎の男!?」
「…えっ?」
「てかてか、怪しい“謎の男”って別に男の人じゃなくてもいいよね?じゃあ習ったことない、物理の澤村先生は“謎の女”…!?」
「ま、マドカちゃん…?」
「コンビニの店員さんも、おんなじ電車に乗ってる人も、駅員さんも謎の人!?駅前のマンションは謎の人だらけのスパイハウス!?ひゃぁー!!」
「……。」
呆れた顔をしつつ、こういうところがマドカちゃんの可愛いところなんだよな、と思うさくらであった…
おしまい